名前:森風美。特技:Googleマップで近くのおもしろスポットを探すこと。
Nachu Magazine記念すべき第一回の「旅のよみもの」は、Googleマップで見つけたとっておきの場所、スメ広場をご紹介します。
憧れの地熱釜
鹿児島県指宿市。与謝野晶子も訪れた有名な「砂風呂」を堪能した夜、翌日の観光プランを「なまけもの号」の中でじっくり練ることにしました。
いつも通りGoogleマップをしらみつぶしに見ていると、鰻池のそばに「スメ広場」という見慣れない文字列が。しかもmap上のカテゴリは「シェアキッチン」。
【噴出する温泉の蒸気を利用した天然のかまど。鰻温泉で体を癒した後は、スメで蒸した野菜や卵でお腹も満たしませんか。】
関東に住む私にとって「地熱釜」といえば、伊豆諸島最南端の青ヶ島にある『ひんぎゃ』が思い浮かばれます。ここ数年、青ヶ島キャンプで『ひんぎゃ』することにずっと憧れていたのですが、渡航率50%の青ヶ島に比べ、確実に車で行ける「スメ」はとっても魅力的。
食材は道の駅で
翌朝は「道の駅 山川港 活お海道(いおかいどう)」からスタート。地物の蒸したら美味しそうな野菜を買い集めました。
卵も欲しかったけど、10個入りしかなかったので、その先の旅を考えて泣く泣く断念。スメセットを販売して欲しいなと切実に思いました。
市場のお姉さんにスメ情報を聞いたところ、「行ってすぐできると思うよ、今の時期ならこれが美味しいから!」とサービスでさやえんどうをプレゼントしていただきました。
ドライブしながら考えること
指宿市街からスメまでおよそ20分。秘境秘湯といいつつ結構すぐにアクセスできます。見事な開聞岳を見ながら進んでいくと、「長崎鼻」という不思議な地名が。
三浦半島の「黒崎の鼻」も変な地名だな、と思っていましたが、あらためて考えても人体の一部が地名についているのは結構な違和感。
調べてみたところ、和語では「先端、とがったところ」を「ハナ」といい、この流れで「鼻」がつく地名が多くあるんだそう。
顔の先端にある鼻、植物の先端に咲く花、転じて物事や状態の始まりを意味するようになり、「端から相手にされない」「出端をくじく」とつながっていったそうな……。
もちろん諸説あるので「面白いな~」という感想に留めますが、日常では当たり前に通り過ぎてしまう疑問をじっくり深掘りする余裕が生まれるのも旅の醍醐味。
スメ広場
さて、スメがあるのは鰻池の東岸。池に大ウナギが出た際に、集落ではウナギを神様として祀るようになり、鰻池という名がつけられました。漫才師「銀シャリ」の鰻さんの珍しい苗字の由来もこの地にあるそうです。
鰻地区は硫黄の匂いが立ち込めていて、各家庭にある「スメ」からも蒸気が上がっています。大分の「地獄蒸し」は観光地の雰囲気が強いですが、こちらは情緒と生活感が溢れていました。
鰻地区は集落の道幅が狭いので、大きなキャンピングカーでの来訪時は鰻池駐車場に停めて「歩いて」行うのがおすすめです。さらに【タイヤ溶けます。駐車禁止】と、見慣れない注意書きもあったので、大切な車は注意しましょう。
タフに旅する軽バン「なまけもの号」はスメ広場内に駐車。誰もいない貸切状態!リア扉を開けてゆっくりと食事を取れるようにしたら、早速スメ体験に移ります。
スメ体験
こちらが地熱釜・麻袋・ザル・水場・テーブル完備の「スメ」です。到着してから知ったのですが、西郷隆盛が愛し、湯治をしたことで有名な鰻温泉では「いぶすき西郷どんガイド」のプランがあり、
- 毎日営業
- 費用500円
- 前日16:30までの受付
- 所要時間約45分
で、街歩きからスメ体験までできるツアーが開催されています。
町ぶら案内、スメ体験食材の温泉たまご 1 個と季節の野菜、 記念品、傷害保険込み込みのツアー。私も西郷どんに詳しくなりたかった、温泉たまごを食べたかった。そして後述の理由でもこちらのプランを最推しします。
スメの利用はツアーの方が優先になるので、私のように飛び込みの人は「空いていれば使える」形になります。備え付けの水場で野菜を洗い、ザルごとスメにセット。麻袋を被せてしばし待ちます。
先に蒸し上がったオクラとナス、さやえんどうがこちら。醤油と鰹節をかけていただきました。お姉さんのおすすめの通り、さやえんどうがとっても甘く、プリッと弾ける1番のおいしさ!
駐車場は無人で貸切だったので、安納芋とニンジンが蒸し上がるのを待ちながら、どんちゃんとのんびり過ごしました。
この地域ではどんな風に日常生活にスメを取り入れいているんだろう?江戸時代には温泉としての記述があるけれど、一体いつからスメを……。私は「ルーツ」が好きなのでよくそんなことを考えています。
本当に気をつけて!!!!
蒸し具合はどうかな~?とスメにも慣れてきた頃、事件が起きました。「火傷(やけど)」です。
スメから噴き出る水蒸気は90度以上。火傷の直後はなんとなく冷やしてやり過ごそうとしていたのですが、あっという間にジンジンと誤魔化せない痛さになり、急いで市内の皮膚科へ向かいました。
お医者さんに「スメで火傷をしてしまって……」という恥ずかしさったらないです。お医者さんには「あぁ、スメね~」と言われます。安全に十分配慮するか、先述のツアーに参加するのがおすすめです。
この火傷、2週間の九州旅行の間、ずっと痛くて。1週間ほどして包帯が取れてからもずっと見苦しくて。この時期は右手を庇った写真が多いのもいい思い出です。
スメ広場に戻ってから再開した安納芋とニンジンはすごく美味しかったです!共同浴場「区営うなぎ温泉」ではスメで蒸した温泉たまごを販売しています。魅惑のスメ。やけどには十分に気をつけて、ぜひ体験してみてください。